未経験からWebディレクターへのキャリアチェンジを考えているかたの中には、
「Webディレクターの仕事はきついって本当?」
「しんどい仕事だったら自分に務まるのか不安」
と思っている人もいるのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、私が実際にWebディレクターの仕事を行うなかで、確かに「きつい」「しんどい」と感じる瞬間はたくさんあります。私自身、未経験からこの仕事に転身して、何度もそう感じてきました。
ただ、その「きつさ」には理由があり、乗り越え方もあります。
今回は、私が実際に感じてきた「きつさ」の正体と、それでも続けてこられた理由をお話しします。
Webディレクターが「きつい」と言われる理由
①いつも板挟みの立場にいる
Webディレクターは、クライアントや上司などの指示を出す側と、実際に手を動かすメンバーの間に立って全体を取りまとめる仕事です。
私は事業会社で働いていますが、決定権を持つ役員と直属の上司の意見がいつも真逆で、上司の意向で進めていた案件が、完成間近になって、役員の一言でひっくり返るということがよくありました。
そんな時、自分の権限ではどうにもできない状況でも、メンバーへの説明やフォローを行うのはWebディレクターの役目です。メンバーからすると窓口は私なので、不満も相談も、良いことも悪いことも、全部私のところに集まってきます。
「例のプロジェクトがやり直しになってしまった」と伝えて修正の内容やスケジュールを練り直す時は、非常に気まずい気持ちと、どうにもできなかった自分への歯がゆさでやるせない気持ちになります。
そのため、常に板挟みの状態の中で、何かが起こっても自分のことより全体最適を考えて行動しないといけない部分が、精神的につらいと感じることもあります。
②常にマルチタスクが求められる
事業会社であれ、制作会社であれ、常に複数の案件が同時に進行しています。
案件ごとにどのフェーズにいるかも違うため、一日の中で考える内容や作業内容がめまぐるしく変わります。私の場合、ワイヤーフレーム作成のような重めのタスク以外は、ほとんど30分刻みで作業やミーティングが入っていました。
ここでうまく頭を切り替えられないと、設計の漏れや見積の甘さにつながって、後で二度手間になってしまいます。しかも、ディレクターの動きが止まると、プロジェクト全体の進行が止まってしまう。自分の頭の切り替えや、やることの優先順付けなどのひとつひとつの判断が全体の進行に直結する、というプレッシャーは常にありました。
③スケジュールに追われる
クライアントワークでなくても、上から短納期を指定されることは多いです。要件はまだふわっとした概念しかないのに、公開日だけタイトなスケジュールで決められている、というような状態で渡されることも多々ありました。
公開日というゴールから逆算してスケジュールを組み、はじめは余裕を持たせて設計したつもりでも、結局は様々な事情で押していって、最終的にはなんとか間に合わせるために何かを取捨選択せざるを得なくなります。
自分の作業スピードだけ上げてもなんとかなるものでも無いですし、メンバーに「早くやって」と言ってスピードが上がるわけでもありません。メンバーそれぞれの精神的・業務的負荷をなるべく減らしながら、案件のクオリティも保った状態でゴールまで持っていくにはどうすればいいかを、常に考えながら動く必要があります。
限られたスケジュールとリソースのなかで、理想の完成イメージまで持っていくことが難しいとなった時の、その判断そのものが一番重かったです。
④専門分野の”翻訳者”であることが求められる
デザイナー、エンジニア、コーダー。Webディレクターは、どの専門家でもありません。それでも、それぞれの専門家と会話ができるレベルの理解は必要です。そしてそれを全体に伝えるためには、個々の専門用語や意図などを、いったん自分のなかでかみ砕き、全員が理解できる形に「翻訳」することが欠かせません。
翻訳をするにはある程度の業務理解が必要ですが、専門知識をどこまで身につけるべきかは、正直いつも難しいと感じています。全部を専門家と同じレベルにするのは現実的ではないし、専門分野はその道のプロに任せるべきだとも思っています。
私の場合は、専門知識そのものよりも、相手が実務で何を大切にしていて、どこがネックになりやすいかという、職務や人によって違う事情や想いを理解することの方を重視して仕事を進めるようにしています。そのうえで、その人の業務における障害をなるべく取り払い、全力を発揮できる環境をつくる。最近では、それがWebディレクターの本質でもあるような気がしています。
⑤プロジェクトの最終的な責任を負う立場にいる
上司やクライアントの窓口も、メンバーの窓口もすべて自分なので、自分起因ではないトラブルや、それによる遅延も、最終的にはWebディレクターが背負うことになります。そう明文化されているわけではありませんが、現場にはそういう空気がありますし、私自身もその責任を負う立場であると自認して仕事をしています。
プロジェクト全体に常に責任を持たなければいけないというのは、他のメンバーよりも精神的な負荷が高いということです。
未経験でWebディレクターになって、前例もなければ教えてくれる人もいなかったので、「これで合っているのか」という不安は常にありました。時には、ストレスに押しつぶされそうになったり、毎日内省を繰り返して、負のループから抜け出せなくなったりすることもありました。
ここまで読むと、Webディレクターは大変なことばかりに見えるかもしれません。それでも、私がこの仕事を続けてこられたのには理由があります。
次の章からは、その理由についてお伝えします。
それでも乗り越えられる理由
①板挟みだからこそ、感謝も自分に返ってくる
上司やクライアント、メンバーの間で板挟みになる立場だからこそ、うまくいったときの感謝や、良いフィードバックを受け取るのも全部自分です。
「自分はプロのWebディレクターだから、やることは常に完璧で正しい」とは言えません。それでも、逃げずに向き合った分だけ、良い結果もすべて自分のところに返ってきます。しんどさと嬉しさは、実は同じ場所からやってくるのだと思っています。
②真摯に向き合えば、メンバーとの間に”戦友”のような絆が生まれる
上層部とメンバーの間に立って緩衝材になったり、自分なりの想いや考えを伝えて方針を示したり。そうやって真摯に向き合っていると、メンバーも誠実に対応してくれますし、しんどい局面も一緒に助け合って乗り越えてくれます。
大きな局面を乗り越えた先には、戦友のような結束感が生まれることもあって、一緒に悩んで乗り越えたからこそ、プライベートでも気軽に話せる関係になった人もいます。
完璧でない自分にも、いざという時に一緒に戦ってくれる人たちがいる。そう思うだけで、どんなにつらい局面が来ても乗り越えられるという自信につながっています。
③謙虚な姿勢があれば、専門家も誠意で応えてくれる
わからないことを素直に「わからない」と伝えたり、わからないなりに一生懸命調べたり。
未経験であっても、謙虚な姿勢や学ぶ姿勢を持って向き合えば、デザイナーやエンジニアも誠意を持って教えてくれたり、丁寧に対応してくれたりします。専門知識がないことは、決して弱みだけではありません。素直に聞き入れる姿勢があれば、それが信頼関係のきっかけになることの方が多いと感じています。
そのうち、教えてもらったことを業務で活かせるようになり、初期よりもスムーズに、無駄なく依頼ができるようになりました。プロジェクトが円滑に進むようになると、自分の成長を実感できて嬉しく思います。
④「全部自分がやらなきゃ」から「周りを頼っていい」への変化
Webディレクターという立場上、「自分が全部やらなきゃ」「自分が全員を引っ張らなきゃ」というプレッシャーを抱えていた時期がありました。でも今は、もっと周りを頼ってもいいと思えるようになりましたし、頼ったときにちゃんと助けてくれる関係性も築けてきたと感じています。
マルチタスクでの頭の切り替えも、スケジュールの読み違いも、経験を積むうちに勘所がつかめるようになってきて、以前より力を抜けるところが分かるようになったのも大きな変化です。この意識の変化があってから、業務に対するストレスの感じ方も変わってきたように思います。
⑤成果が数値で見える、Webだからこその面白さ
人間関係以外では、成果が数値という目に見える形で返ってくることも、この仕事の支えになっています。自分がやったことがダイレクトに目に見える形で返ってくるので、そこにやりがいがあると感じています。
以前、法人リード獲得のためにホワイトペーパーを制作し、資料請求ページに設置したことがありましたが、その結果月100件以上のリード創出につながった時は、とても嬉しかったです。
Webサイトは作って終わりではなく、育てていくものです。もちろん数字が伸びない、成果がでないこともありますが、そこから「次はなにをするか」を考え、PDCAを回しながら挑戦と失敗を繰り返していく。そしてまた次のアイディアや戦略が生まれたりする。そういう部分を、今は楽しいと思えています。
まとめ
Webディレクターが「きつい」と言われる理由は、板挟みの立場やマルチタスク、タイトなスケジュール、一定レベルの専門知識、そして最終責任を負うという、この仕事の構造そのものから来ています。だから、なくすことはできません。
でも、その正体が具体的にわかれば、漠然とした怖さは減りますし、経験を積むごとに付き合い方やマインドの切り替え方も身についてきます。
いまでも、しんどいと感じる場面はあります。それでも、私はWebディレクターという業務が好きですし、これからも続けたいと思っています。そう思えるのは、やりがいや楽しさがつらさを上回っているからです。
この記事を読んで、Webディレクターという業務に対する不安よりも楽しさの部分に興味を持つことができたら、ぜひ挑戦してみて欲しいです。未経験からでも、実務は動かせるようになります。もしかしたら、そこから新しい世界が開けるかもしれません。

